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『視点』事実はひとつ-薬物問題最前線-

Ⅳ【薬物規制の背景について:若干の付け加え】
 
  今から半世紀前、国際社会は条約を改正してまで、薬物乱用を“防止”することが最も重要である、との意思を表明しました。麻薬に関する単一条約は 1972 年 の議定書により改正されましたが、当初、関連条項(第 38 条)のタイトルは「中毒者に対する措置」であったところ、「濫用に対する措置」と変更されて、まずは「濫用の防止に特別の考慮」を払うべきだと規定されたのです。

 その一次予防に加え、早期発見、治療、 教育、アフターケア、更生から社会復帰にいたるまで、各国での創意工夫が必要だとしたのです。その順番を間違えてはいけないということです。

 まさに我が国において、例えば(公財)麻薬・覚せい剤乱防止センターが主導して展開してきた活動の原点が、ここにあります。だからまた、我々が(一社) 国際麻薬情報フォーラムを設立した理由もそこにあります。正確な事実と検証されたデータに基づいて、情報を発信するために。

 それはしかし、標語を言いっぱなしで済むことではないのです。特に若者たちが、自分たちの頭で考えられるようにするにはどうすべきかを、模索し続ける他はありません。時と場合によって、“解”はひとつではないからです。


 私が麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長に選任されてすぐ後、その広報誌の巻頭随想に寄稿しました。「岐路にたつとき」と題し、記憶しておかなければならないことがあるとして、次の旨のことを特記しました。
かつて、薬物乱用防止の標語は、不幸にして薬物乱用を始めてしまった者たちへ向けてのものばかりであったところ、初めて、薬物に手を染めていない方々を対象にする標語が創られました。それこそが薬物乱用は「ダメ。ゼッタイ。」だったのです。

 お母さんが子どもに、「ダメよ。そんなことをしては」といい、子どもがそれに応えるといった、愛情のこもった親子の会話のように、と創始者たちが考えた記録が残っています。「覚せい剤やめますか。それとも人間やめますか。」といった昔の標語の延長ではなく、全く新しい発想からでした。

 「ダメ。ゼッタイ。」という標語は、記録に残っているとおり、依存者に対しての呼びかけではなくて、始めていない者たちへの呼びかけであったという事実は、記憶しておく必要があります。

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