大麻とは、「カンナビス・サティバ」または「カンナビス・インディカ」と呼ばれる植物の葉、花穂、茎、種子を乾燥させたものです。 大麻には精神作用物質であるテトラヒドロカンナビノール(THC)やその他類似化合物が含まれています。 大麻草から成分を抽出した加工品が作れることもあります。 |
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一方で、若年層を中心に大麻使用に対する意識の変化がみられ、「少しなら構わない」「個人の自由である」という考えが、10歳代~30歳代の若年層で増加しています。 アメリカの一部の州で、大麻の医療目的での使用や、嗜好目的での使用が合法化されたことが、こうした意識の変化に影響を与えている可能性があります。 |
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大麻は、短期的にも長期的にも脳に影響を及ぼします。 短期的影響について 大麻を吸引すると、ただちにTHCが肺から血管へ吸収され、血液がTHCを脳やその他全身の器官に運びます。 大麻を食べたり飲んだりした場合には、THCの吸収が穏やかになります。 その場合、効果を実感するのは30分後から1時間後です。 我々の生体内にはTHC類似物質が存在しています。この物質は、正常な脳の発達や機能を調節する役割を担っています。 THCは、脳内に存在するTHC類似物質が作用する受容体(=カンナビノイド受容体)に作用します。 大麻はこれらの受容体を最も多く含む脳の各部分を過剰に反応させます。 これにより、使用者は「高揚した」気分になります。その他の影響には以下のようなものがあります。 ・感覚の変化(例えば、色がより鮮やかに見えるなど) ・時間認識の変化 ・気分の変化 ・動作障害 ・思考能力および問題解決能力の低下 ・記憶障害 ・幻覚(高用量の場合) ・妄想(高用量の場合) ・精神病状態(高用量の場合) 長期的影響について 大麻は脳の発達にも影響を及ぼします。 若者が10代で大麻を使用すると、大麻が思考能力や記憶力、学習機能を低下させ、これらの機能調整に関わる脳領域において、神経回路形成に影響を与える場合があります。 大麻の影響がどれほど継続するか、およびその変化が永続的なものかどうかについては、現在も研究が行われています。 例えば、ニュージーランドのデューク大学の研究者が行った調査によれば、10代で大麻を常用し、現在も大麻使用障害である若者は、13歳から38歳までの間に平均して8ポイントのIQの低下が見られました。 精神的な能力の低下は、成人してから大麻をやめても完全には戻りませんでした。 一方、成人してから大麻を使用しはじめた人々には、IQの顕著な低下は見られませんでした。 アメリカの国立薬物乱用研究所(NIDA)の青年期脳認知発達委員会(ABCD)が行った長期的な調査では、膨大な数のアメリカ人青少年を少年後期から青年初期にわたって追跡し、大麻やその他の物質が青少年期の脳の発育に対して単独または複合的に、どのように影響を及ぼすか、またどの程度影響を及ぼすかについて明らかにしました。 National Institute on Drug Abuse (NIDA) |
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大麻は紙巻き(ジョイント)、パイプ、水パイプ(ボング)で吸引するのが一般的です。 空にした葉巻に大麻を一部または全部詰めたブラント(BLUNT)と呼ばれる形態で吸引される場合もあります。 煙の吸引を避けるために、ヴェポライザー(電子タバコ)を使う人もいます。 大麻から有効成分(THCを含む)を抽出し、ヴェポライザーの貯蔵カートリッジにその蒸気を溜め込みます。 そして、煙ではなく、蒸気を吸引します。液体の大麻抽出物質を使うヴェポライザーもあります。 また、ブラウニーやクッキー、キャンディーといった食品に混ぜたり、お茶のように煮出したりすることもあります。 最近人気になっているのが、THCの含有量の多い大麻樹脂をさまざまな方法で摂取する方法です。 |
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大麻は身体および精神の両方に幅広い影響を及ぼす場合があります。 心身への影響について ・呼吸障害: 大麻の煙は肺を刺激し、頻繁に大麻を吸引する人は、喫煙と同じような呼吸障害を起こすことが多くなります。 主な症状として、日常的な咳や痰、肺疾患などがあり、肺感染症の危険性も高くなります。 しかし、これまでのところ、大麻使用者が、肺がんのリスクが高くなるという研究結果は出ていません。 ・心拍数の増加: 大麻の吸引後、最大で3時間、心拍数を上昇させます。この影響により、心臓発作のリスクが高くなります。 年配者や心臓に何らかの疾患のある場合は、そのリスクが高くなる場合もあります。 ・妊娠中および産後の発達問題: ある調査では、24歳以下の妊婦のおよそ2割が大麻の検査で陽性であることが判明しました。しかも、この調査では大麻を使用したという自己申告による使用率よりも、薬物検査の大麻陽性率の方が約2倍高かったことも明らかにされています。この結果は、妊娠中の女性の自己申告による大麻使用率の測定は、正確ではなく、むしろ過小報告になっていることを示唆しています。 さらに、アメリカ医療大麻薬局におけるある調査では、医療大麻薬局におけるの医療従事者以外のスタッフが、妊婦に対して吐き気を抑えるために大麻使用を推奨している一方、医療従事者はこれに反対していることもわかりました。 これは妊娠中の大麻の使用が、出生時の低体重や、赤ちゃんの脳や行動障害のリスクを高めることを医療従事者が懸念しているからです。 妊婦が大麻を使用すると、発達中の胎児の脳に一定の影響を与える可能性があります。子宮内で大麻の影響を受けた子供は、影響を受けていない子供と比べて、注意障害や記憶障害、問題解決能力に対する障害のリスクが高まります。 また、ある研究では、一定量のTHCが授乳を行う母親の母乳に移行することが示されています。大麻を常用した場合、THCは赤ちゃんの脳の発育に影響を及ぼす量に達することもあります。 ・強烈な吐き気や嘔吐: 長期にわたる大麻の常用により、「カンナビノイド悪阻症候群」を引き起こす場合があります。 これにより、繰り返す激しい吐き気や脱水症状が表れ、救急治療を必要とする場合もあります。 精神への影響について 長期にわたる大麻の使用は、以下のような精神障害を引き起こす場合があります。 ・一時的な幻覚 ・一時的な被害妄想 ・統合失調症患者の症状悪化 幻覚や被害妄想、支離滅裂な思考といった症状を伴った深刻な精神障害が起こる場合があります。 |