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【FACT FULNESS(ファクトフルネス)ハンス・ロスリング他共著 日経BP社
(2021年4月5日)
 

「あなたは世界の真実を知っているか?環境、貧困、人口、エネルギー、医療、教育について、私たちの中にある10の思い込みを克服し、データを基に世界を正しく見る習慣を身につけよう」(本書 帯より)

●質問1 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
 A 20% B 40% C 60%
●質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
 A 低所得国 B 中所得国  C 高所得国

●質問3 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
 A 約2倍になった B あまり変わっていない C 半分になった
●質問4 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
 A 50歳 B 60歳 C 70歳
・・・冒頭、この後質問13まで続きます。お恥ずかしい限りですが私はここまで全問不正解でした。皆さん、いかがですか?(正解は1-C 2-B 3-C 4-C)
もし興味がおありであれば『10の思い込み』についてはぜひ本を手に取ってご覧ください。



さて、薬物問題について、メディアやSNSから発信される昨今の様々な意見について、私たちは正しい情報を選別し理解できているでしょうか?インパクトのある見出しや、一部の専門家の個人的な考えだけを見聞きしてすべてを理解したような錯覚に陥っていないでしょうか?特定の人たちだけで語られる偏った考えを正論のように聞いていませんか?間違った思い込みが染みついていませんか?
この本の“事実に基づく世界の見方”(ファクトフルネス)はそのまま今、私たちが直面している“薬物問題を正しく理解し、実態に即してそのあり方について問い直す”ことに大いに参考になるのではないでしょうか?


最後に質問8の問いかけはこうです。
「現在、世界には約70億人の人がいます。下の図では人の印がそれぞれ10億人を表しています。世界の人口分布を正しく表しているのは3つのうちどれでしょう?(図省略)」
・・・全員が正解できれば“アジアン・ヘイト”は起こらないはずですね。





「強制終了、いつか再起動」吉野万里子 講談社
(2021年3月17日)
 

令和2年の少年の大麻事犯について警察庁からリリースが出ましたが、そのタイミングで中学生の薬物問題を鋭くえぐったヤングアダルト小説が刊行されていましたので紹介します。関連団体への取材やデータに基づきながら今どきの中学生のリアルな側面が繊細に描かれています。

令和2年における少年(20歳未満)の大麻事犯の検挙者について(令和3年3月警察庁)

“タバコか。タバコに違いない。必死にそう思い込もうとしている自分に気づいた。本当は違うと察している。頭の奥でアラームが鳴っている。二人の目が合った。安岡さんは、僕の背後にかわいい猫でもいるかのように、こっちに目を細めた。
「大麻」
「ああ、うん。」僕は大きく息をついた"



薬物なんてさ、一生自分とは関係ないって思ったし。前の学校で、そういう授業受けたとき、こんなのやるわけねー、って思ったし。でも、ふわっと目の前に薬物が現れると、おもいがけなさ過ぎて現実味失う。仲いい人がやってて、その人が異常者でもなく、ごくフツーに見えるとさ”(本書より)






スマホ脳 アンデシュ・ハンセン 久山葉子(訳)新潮新書
(2021年1月18日)
 

昨年末から話題になっていた本なので既に読まれた方も多いと思いますが、ようやく年明けになって手にすることができました。デジタル社会に身を置く今の私たちが漠然と抱える不安や素朴な疑問に明快に答えてくれる予想通りの納得のいく内容でした。脳と身体の関係、特に若い人達への影響、報酬系、ドーパミン、依存・・・薬物乱用防止の領域でもおなじみのワードの解説もとても勉強になります。

帯からキーワードを、そして訳者あとがきから著者について、冒頭部分の抜粋です。

 ○SNSは報酬中枢を煽る仕組みがある
 ○IT企業トップは子供にスマホを与えない
 ○心の病が増えたその理由
 ○人生の数年がフェイスブックに吸い取られる
 ○SNSが女子に自信を失わせている
 ○ツイッターに隠された「依存」の仕組み
 ○幼児にタブレット端末は向かない
 ○マルチタスクができる人間はごく僅か
 ○私たちのIQは下がってきている
 ○集中力を取り戻す具体的な手段



人生のバイブルに-訳者あとがき
スウェーデンで今最も注目されているメンタルヘルスのインフルエンサー、アンデシュ・ハンセン。精神科医である彼は、2016年に刊行された『一流の頭脳』で「運動するだけでストレスに強くなり、記憶力や集中力がアップする」ことを数々の論文を引用して示した。それが、人口が日本の1/13のスウェーデンで60万部の大ベストセラーとなり、世界20カ国にも翻訳されたのには理由がある。ウォーキングやランニングなど、簡単でコストのかからない運動をするだけでこれほど素晴らしい効果をいくつも得られるという衝撃の事実はもとより、ハンセン独自の「人間の進化の見地」に基づいた説明がなんともわかりやすく合点のいくものだったからだ。・・・・





正しく知って正しく使う「くすり」の大事典 (くもん出版)
(2020年10月19日)
 
「セルフメディケーション」という言葉が一般的なり、子どもでもコンビニやインターネットで簡単に薬が買えるようになった昨今、既に学校教育現場では保健体育授業の一環として「くすり教育」が始まっています。 薬が体内でどのように作用するのか、どのように作られるのかといった基本事項から、正しい使用法、副作用について、医師や薬剤師に症状を伝える際の注意点まで薬にまつわる様々な事柄がわかりやすく解説された大事典が出来ました。    

そして巻末特集では、近年の薬物乱用の低年齢化に伴い、学校内でも危険薬物に関する教育が活発化していることを踏まえて薬物乱用とはなにか、どんな種類があるか、その影響は、自分の身をどう守ればよいかなど、健康な人生を送るために大切なことがデータとともに詳しく解説されています。今回センターではこのパートを監修協力させていただきました。


大人でもなかなか正しく理解することの難しい「くすり」の問題について、家族や仲間たちと一緒に考えてみるいい機会ではないでしょうか?

詳細はくもん出版ホームページへ



『DOPESICK』~アメリカを蝕むオピオイド危機~ ベス・メイシー著(光文社)(2020年7月7日)

薬物(オピオイド)の過剰摂取は過去15年間で既に30万人の米国人の命を奪っており、専門家は次の5年間で更にもう30万人が死亡するだろうと予測している。今や薬物の過剰摂取による死者は、銃や交通事故の犠牲者を上回り、50歳未満の死因のトップに躍り出ている。その増加ペースはHIVの最盛期を上回るほどだ。(本文より)
米国での薬物問題には医療制度を始め、政治、経済、法律、社会、宗教、文化などが複雑に絡み合っている。だから問題は容易に解決しない。筆者が強調するのは、問題の複雑さを理解するためには、薬物問題を単なる道徳問題としてはいけないということである。・・・経済・社会構造の変化の中で生じる闇は日本にも存在する。・・・(南山大学山岸教授による日経新聞書評より)


オピオイド問題が身近な話題として取り上げられることが少ない日本でも、大麻や覚醒剤など増え続ける薬物乱用問題の根底ある本質は何ら変わるものではないと今更のように考えさせられる。 本書の中で米国での乱用防止のスローガンとしてナンシー・レーガン元大統領夫人の「ジャスト・セイ・ノー」が紹介され、訳者は巻末で日本における「ダメ。ゼッタイ。」を引用しているが、我が国においても複雑に絡みあったこの問題に立ち向かうために、まずは「薬物に手を出さない」予防啓発がこれまで以上に重要な役割を担い、同時に世界中から日本へ入ってくる供給を断つための取締関係者の不屈の努力の継続と、そして本書のテーマである依存症対策の充実と社会の理解及び支援体制等が「三位一体」となって活動することこそが重要なのであろう。

携わる誰もが目指す最終ゴール「薬物乱用のない社会」に団結して向かうべきであって、「ダメ。ゼッタイ。」や「厳罰主義」等のインパクトのある単語だけを拾って本質を見誤ることがあるとすれば、残念なことだと思う。
いずれにしても非常にずっしりと重く記憶される秀逸なノンフィクションに出会うことができた。


どうする麻薬問題「奇跡の国」と言われているが・・・山本 章/薬事日報社】
(2020年6月12日)

今年も6.26国際麻薬乱用撲滅デーに併せて全国各地で「ダメ。ゼッタイ。」普及運動が実施されます。折しもウイルスとの共存の最中、ニューノーマル下での誓いの夏を迎えます。

今回は厚生省(現・厚生労働省)および環境庁(現・環境省)勤務30年の中で「薬物乱用防止対策」にそのほとんどの期間、中心的な役割を果たされてきた山本章さん(元麻薬課長)が自身の経験を振り返りながら、変わらぬ活動の重要性と令和の時代に残された課題を明示されるとともに、今日に至るまでの足跡に想いを込めて私たちにエールを送ってくれています。

以下はネタバレにはならないと思いますが、「第六部ダメ。ゼッタイ。を永遠に」-明日への願い-からの抜粋です。

明日への願いを、ダメ。ゼッタイ。の国民運動の展開の1点に絞ってお話ししたい。
前章まで、薬物乱用防止対策のあれこれを書き連ねた。乱用防止対策は、薬の需要面すなわち薬物を欲しがらない・乱用に巻き込まれないようにする対策と、薬物を供給面から遮断する対策に分ける考え方があるが、取締・水際作戦など供給面の対策や治療は、いずれも薬物乱用の予防対策になっていないことを強調しておきたい。
違法薬物の乱用に陥って人生を棒に振り、はしなくも犯罪者の烙印を押されてしまった人が決まって言うのは「知らなかった」の一言。刑を終え、仮に治療が奏功しても取り返しのつかない時間を取り戻すこともできず、また再乱用に陥る不安や恐怖を抱えながら生きて行かざるを得なくなる。
ましてや家族を奈落の底に陥れた事実、友人・知人を良くない習慣へと誘い込んだ事実、反社会勢力に資金を提供してしまった事実、さらに所属する団体に迷惑をかけてしまった事実などは、いくら悔やんでみても消し去ることは出来ない。1回でも違法薬物に手を染めることは、その依存性ゆえにゼッタイ。ダメ。なのだ。
そのような考え方をベースに、麻防センターを中心にしたダメ。ゼッタイ。の国民運動が、さらに強力かつ末永く展開し続けることを願わずにはいられない。そしてそのためには、麻防センターの自立を求めたい。
~終章へ続く

*麻防センターとは(公財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの略称



【「マトリ」最新データと実態から】
(2020年5月21日)

今回は2020年1月に刊行された元麻薬取締部部長瀬戸晴海氏の「マトリ」」を紹介します。既に財団の広報誌最新号(3月発行)で広告掲載していますが、我々が日頃ニュースなどで見聞きする報道からだけでは知ることのできない薬物事犯の実態、生々しい現実が解き明かされます。

4月に警察庁が薬物事犯の最新情勢(令和元年データ)をリリースしました(HP内「統計資料」に抜粋を掲載しましたのでご覧ください)
「薬物別検挙数では覚醒剤がやや減少、大麻が過去最多を更新、薬物事犯全体としてほぼ横ばい」
「覚醒剤押収量2tと大幅増、同密輸も依然高水準、その他の薬物を合わせると3t超える押収量となった」 「大麻では所持だけではなく栽培事犯、大麻押収量等周辺事犯も増加傾向」などが要約されています。そして事犯対策の柱を「覚醒剤密輸・密売の供給遮断と、大麻事犯取締り強化及び啓発活動」としています。

さて、一方でコロナ禍最中の5月、薬物関連記事をネットニュースで見てみますと、
・大麻所持でラッパー逮捕、その後の検査で覚醒剤の陽性反応(東京)
・自称アーティスト大麻所持で逮捕、営利目的で栽培も(広島)
・兵庫県警22歳巡査、大麻所持で逮捕(兵庫) ・コロナ禍休校で一時帰国の女子大生、国際郵便で覚醒剤錠剤(ヤーバー)を密輸、コントロールド・デリバリー捜査で受け取ったところを現行犯逮捕(東京) ・「自分で使うため・・・」25歳消防士、乾燥大麻所持の疑いで 逮捕(茨城)と日々立て続けにアップされています。

行政のデータと日々の報道の中で、今何が起きているのか、これからどうなるのか、我々はどう対処していけばいいのか、瀬戸さんがこの問題の本質を説かれています。
コロナ後、私たちの啓発活動もここからリスタートではないでしょうか。

●「マトリ」厚労省麻薬取締官 瀬戸晴海/新潮新書

【今この時期に「依存」について考えてみませんか】
(2020年4月20日)

外出自粛で家にいる時間が長くなり、ストレス解消方法や健康維持についてのサポート情報も増えてきています。また今このような時期だからこそやれることを実践している人もいることでしょう。過去の感染症をテーマにした書籍なども再注目されているようです。

さて、今この時期に「依存」について(決して難しくなく)考えてみませんか。
私たちが主な対象とする違法薬物を始め代表的な依存としては身近なところでアルコールやタバコ、あるいはパチンコや競馬などのギャンブルがありますが、最近若者を中心に広がるゲーム障害も昨年WHO(世界保健機構)が精神疾患と位置付けました。益々進化するオンラインゲームやそのディバイスであるスマホの依存をメインにとても分かりやすく「依存とは何か」の基礎を教えてくれる本を紹介します。

  脳内借金・正の強化・負の強化・聖域の消失・自己責任など、はっとさせられるワードが示され、その解説になるほどと納得します。一方で若者たちに大きな影響を与える職業としてのプロゲーマー、ユーチューバー、スポーツ競技としてのeスポーツなどについても触れられ改めて考えさせられます。(「スマホ依存から脳を守る」中山秀紀先生/朝日新書)

そして更に薬物依存について詳しく学ばれたい方には、松本俊彦先生の書かれた「薬物依存症」(ちくま新書)こちらもお勧めです。
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