前述した「ヒトに本来備わっている性質や特徴」、「社会からの要求や要請」を踏まえて薬剤師としてどのように薬物乱用防止指導に関わるかを考えますと、一次予防の実践、健康教育の観点から知識の伝達と共に、その知識を応用した問題解決能力、様々な問題や要求に対処する「よりよく生きるために必要な技術的能力」、所謂ライフスキルの獲得を支援することが必要だということはお分かりいただけると思います。ライフスキルに関しては、みなさんも様々なところで学ばれていると思いますが、大きく関係している5つのスキルを以下にご紹介します。
健全な自尊心を指します。自分らしく、より良く生きていくための基盤といえます。問題にぶつかったときに、周囲に影響されることなく、現実的に自分自身を見つめ、自分で判断し行動できる基盤となる「力」 です。
問題にぶつかったときに、客観的に現実を認識し、その中で自分が何ができるかを考え、現実的な目標を設定できる「力」です。
問題を解決するための選択肢をあげ、それぞれの選択肢がもたらす結果を予測し,最善と思われる方法を決定する「力」です。(例えば、「たばこ」や「薬物」についても様々な体や心に与える影響を理解し、仲間からの誘いに乗ることがどのような結果を招くかを予測し、「吸う」か「吸わない」か、「やる」か「やらない」かを自分自身で判断することです。)
人間関係を損なうことなく上手に自己主張できる「力」です。(例えば、「たばこ」や「薬物」を友人から誘われたときに、このスキルが獲得できていると、上手に断ることができます。)
有害なストレスを引き起こさないよう、上手に対処できる「力」です。
■ライフスキル
ライフスキル教育は、主に情意領域(態度・習慣)の教育と捉えていいと思います。態度・習慣は「受け入れ」から始まり、それが「内面化」するまでにはかなりの時間を要しますし、薬物乱用の問題だけでなく日常生活の中の様々な場面での教育が必要なので、学校薬剤師はその一部を担うのだと考える必要があります。
ライフスキル教育の考え方を取り入れた薬物乱用防止教育の実践については、上記の「学年別薬物乱用防止教育プログラム」が大変役に立ちますので、ぜひ参考にしてみてください。この中には、ライフスキルを獲得するために有用だとされている様々な学習方法が紹介されています。
みなさんも既にお分かりのように、知識の習得だけでは態度・習慣は身につきません。様々な能動的学習方法を取り入れることがライフスキルを獲得していくことにつながります。
しかしながら、多様な学習方法を実践するためには、そのためのスキルが必要になります。そこで、比較的取り組みやすいと思われる学習方法である、小グループ討義を取り入れたワークショップ(WS)形式の学習方法を取り入れた学級担任、養護教員との共同授業を実施していますので、この場を借りてご紹介します。