第 2.大麻規制の見直しに係る方向性について
(1)大麻由来医薬品に係る取扱い
①現状及び課題
○大麻から製造された医薬品について、重度のてんかん症候群であるレノックス・ガストー症候群及びドラベ症候群の治療
薬(エピディオレックス)は、アメリカを始めとするG7諸国において承認されている。
○また、麻薬単一条約において、これまで大麻の位置付けは「スケジュールⅠ(乱用のおそれがあり、悪影響を及ぼす物質)」
及び「スケジュールⅣ(特に危険で医療用途がない物質)」という規制カテゴリーに位置付けられていたが、WHO専門家会合
の勧告を踏まえ、令和 2 (2020)年のCNDの会合において、スケジュールⅣのカテゴリーから外すことが可決された。これ
により、依然として、スケジュールⅠとしての規制を課すことは求められつつ、医療上の有用性が認められた。
○日本においても、上記のエピディオレックスについて、国内治験が開始されている。一方、現行の大麻取締法においては、
大麻から製造された医薬品について、大麻研究者である医師の下、適切な実施計画に基づき治験を行うことは可能ではあ
るものの、大麻から製造された医薬品の施用・受施用、規制部位から抽出された大麻製品の輸入を禁止していることから、
仮に、医薬品医療機器等法に基づく承認がなされたとしても、医療現場において活用することは認められていない。
②見直しの考え方・方向性
○国際整合性を図り、医療ニーズに対応する観点から、以下の方向性で見直しを図るべきである。
・大麻から製造された医薬品であって、有効性・安全性が確認され、医薬品医療機器等法に基づく承認を得た医薬品につ
いて、その輸入、製造及び施用を可能とすること。
・このため、大麻取締法第4条においては、大麻から製造された医薬品の施用・受施用、交付、受施用を禁止しているこ
とから、当該第 4 条等の関係条項を改正すること。
・他の麻薬成分の医薬品と同様、大麻及び大麻成分についても、麻向法に基づく麻薬製造・製剤、流通、施用に関する免
許制度等の流通管理の仕組みを導入すること。
○その際、 「大麻を使用してよい」といった大麻乱用に繋がるような誤った認識が広がらないように留意するとともに、大麻由
来の医薬品を麻向法における麻薬の流通管理に移行していくに当たり、当該医薬品が麻薬となる場合に、医薬品の製造・
販売業者や医療関係者においても、麻薬として適正に管理されるよう薬剤の管理を徹底していくことや、患者にとって負
担にならない円滑な施用や薬剤管理のあり方を検討していく必要がある。
なお、現行の大麻取締法において実施している大麻から製造された医薬品に係る治験については、治験参加者に対して
も当該医薬品の厳重な管理を求められているが、制度見直し後においては、他の麻薬と同様の水準での管理に留まる点を
含め、円滑な施用が可能となるよう、十分な周知・徹底を図るべきである。
(2)大麻乱用に係る対応のあり方
①現状及び課題
ア)大麻事犯の増加及び大麻使用に係る課題
○薬物事犯検挙人員を見ると、大麻事犯の検挙人員は8年連続で増加、令和3 (2021)年は過去最多の5,783人となっており、
平成 25 (2013)年との比較で見ても、薬物事犯全体の検挙人員の1.1倍に対し、大麻は3.6倍と大幅に増加している状況となっ
ている。
○また、年齢別で見ても、30歳未満が3分の2近くを占めており、平成25 (2013)年との比較で見ても5.5倍、20歳未満では
16.4 倍と大幅に増加、若年層における大麻乱用が拡大している。
○ G7 における違法薬物の生涯経験率で見ると、日本における違法薬物の生涯経験率は諸外国と比較して低い一方、国内にお
ける経験率の推移を見ると、大麻に関しては覚醒剤、コカイン、危険ドラッグと比べて最も高くなっている。
○大麻のいわゆる使用罪に対する認識を見ると、大麻の所持で検挙された者への調査結果では、使用が禁止されていないこ
とを知っていた割合が 7 〜 8 割台と、多くは大麻の使用罪がないことを認識した上で使用している。また、そのうち 2 割程
度は使用罪がないことが使用へのハードルを下げていることが明らかとなっており、使用の契機にも繋がっているといえ
る状況である。
○また、大麻の使用罪がない現状において、大麻の使用に関する証拠が十分であった場合であっても、その所持に関する証
拠が十分ではない場合、所持罪でも使用罪でも検挙することができない状況が生じている。
イ)大麻に含まれる有害成分
○大麻に含まれるTHCが有害作用をもたらすことが示されており、自動車運転への影響、運動失調と判断力の障害(急性)、
精神・身体依存の形成、精神・記憶・認知機能障害(慢性)等、同成分の乱用による重篤な健康被害の発生が懸念される。
○一方、現行の大麻取締法においては、いわゆる部位規制(成熟した茎、種子及びこれらの製品(樹脂を除く。)については規
制の対象外とし、それ以外の部位を規制対象としている。)を課しているが、実態としては、規制部位か否かを判断する際、
THC の検出の有無に着目して取締りを行っている。
○また、麻向法においては、大麻草由来以外の化学合成された THC について麻薬として規制を課している。
○一般的に、薬物事犯での薬物使用の立証は、過去の判例等に基づけば、被疑者の尿を採取し、鑑定することにより行って
いる。このため、大麻の使用を問う場合においても、同様に、大麻使用後の尿中の大麻成分の挙動を把握しておくことが
重要である。
○その際、受動喫煙や THC が混入しているおそれのある CBD 製品の摂取による THC 代謝物の尿中排泄への影響についても
確認する必要がある。
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