の措置)
・あへん法(あへんの供給の適正を図るため必要な取締り)
・大麻取締法
・覚醒剤取締法(覚醒剤の乱用による保健衛生上の危害を防止するため必要な取締り)
・国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に
関する法律(麻薬特例法)
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法) (指定薬物の取締り)
上記の麻向法(昭和28年法律第14号)及び覚醒剤取締法(昭和26年法律第252号)は成分規制であるが、現行の大麻取締法は、
部位規制である。麻向法、あへん法(昭和29年法律第71号)、覚醒剤取締法、医薬品医療機器等法(昭和35年法律第145号)の各
法律には、みだりに所持、施用・使用した場合の罪が規定され、制定当初から所持に対する懲役・罰金に係る罰則と同様の罰
則が使用に対しても規定されている。一方、大麻取締法には所持に対する罰則は規定されているが、使用に対する罰則が規定
されていない。
○大麻取締法
大麻については、大麻草の部位に基づく規制を行っており、具体的には成熟した茎や種子を除く花穂、葉等が規制対象となっ
ている。部位による規制となった背景には、大麻取締法が制定された昭和 23 (1948)年当時、大麻の有害作用がどのような成分
により引き起こされるのかについて判明していなかったこと、また繊維等の製品としての麻の流通等を規制の対象から除外す
る必要性があったことがある。
その後、1960 年代に入り、大麻草に含まれる成分として THC や CBD 等の成分が同定され、大麻の有害作用は主に THC が原
因で引き起こされることが明らかにされた。
現行の法令上、大麻草の規制部位から抽出された THC については、大麻草の規制部位から抽出された製品が大麻の定義に含
まれるため、大麻取締法上の規制の対象となる。他方、化学合成された THC については、大麻草の規制部位から抽出された製
品ではないため大麻の定義に含まれない一方、麻薬として指定されており、麻向法の規制の対象となっている(麻向法第2条第
1号及び同法別表第1第75号の規定に基づく麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令(平成2年政
令第 238 号)第 1 条第 63 号及び第 64 号)。
法律の制定時に大麻の使用に対する罰則を設けなかった理由は不明であるが、考慮したとも考えられている「麻酔い」は現状
においては確認されていない。
○薬物乱用防止五か年戦略
平成 30 (2018)年には、薬物事犯の国際化を見据えた水際対策、未規制物質又は使用実態の変化した薬物への対応、及び関係
機関との連携を通じた乱用防止対策を重点に置いた「第五次薬物乱用防止五か年戦略」 (平成 30 年 8 月 3 日薬物乱用対策推進会議
決定)を策定し、薬物乱用防止対策を一層強化している。
こうした取組の結果、我が国の違法薬物使用の生涯経験率は、諸外国と比較して著しく低く、特に大麻使用の生涯経験率に
ついては、欧米各国が 20 〜 40% 台であるのに対して我が国では令和 3 (2021)年において1.4%にとどまっている
ⅰ
。
○乱用の実態
「第五次薬物乱用防止五か年戦略」の令和3 (2021)年のフォローアップにおいて示されたように、大麻事犯の検挙人員は平成
26 (2014)年以降増加の一途をたどり、8年連続で検挙者数の増加が見られ、今日は「大麻乱用期」が確実といえる状況となってお
り、特に若年層における乱用が拡大している。一部の国や州における大麻の合法化について、その合法化された背景、合法化
の範囲や使用に係る制限などの正確な情報が伝わっていない一方で、 「大麻に有害性はない」 「大麻は健康に良い」等の誤った情報
がインターネット等で流布されていることに加え、麻薬や覚醒剤といった大麻以外の違法薬物には使用罪があることに対し、
大麻には使用罪が存在しないことが、安易な大麻の乱用が拡大する一因となっている実態がある。
青年期の大麻使用のまん延は、大麻に起因するうつ病と自殺傾向を発症する可能性のある多数の若者を生み出すこととなる
との論文があること、 「令和 2 年版犯罪白書 - 薬物犯罪 -」 (法務総合研究所)の調査でも、国内の覚醒剤取締法違反の入所受刑者の
うち、覚醒剤の自己使用の経験がある者の約半数が大麻使用の経験を有し、そのうちの約半数が 20 歳未満で大麻の使用を開始
したという結果もあり、大麻は、より効果の強い薬物の使用に移行していくおそれが高い薬物(ゲートウェイドラッグ)である
ことが指摘されている。
○大麻事犯の巧妙化
大麻草は秘密裏に自己完結的に栽培可能で犯罪が潜在化しやすく、インターネットや SNS 等の普及により違法薬物に関する
様々な情報へのアクセスが容易となり、若年層が大麻を入手しやすい環境にある。
SNSに薬物密売広告を掲載して購入客を募り、秘匿性の高いインスタントメッセンジャーへ誘導して商談(薬物種、量、金額
等)、外国の暗号資産取引業者などを通じて決済し、発送者の特定が困難な配送手段で薬物を客の指定住所へ発送するなど、密
売の手口が巧妙化している。
また、大麻の密輸入事犯においても、乾燥大麻が減少し、大麻リキッド(液体大麻)の密輸入が増加している。大麻リキッド(液
体大麻)の隠匿方法が巧妙化しており、事情の知らない第三者を受取人とするなど密輸入手口が悪質化している。
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