令和4年9月29日 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会 大麻規制検討小委員会 本規制検討小委員会は、本年5月より、近年の若年層を中心とした大麻事犯の増加等の国内における薬物情勢、諸外国にお ける大麻から製造された医薬品の医療用途への活用、大麻草植物・大麻から抽出される成分(カンナビノイド)の活用等の国際 的な動向、また、大麻栽培を取り巻く現状等、大麻をめぐる様々な状況の変化を踏まえ、幅広い見地から、その規制等のあり 方について検討を行ってきた。 この度、以下のとおり、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた基本的な方向性を示す「とりまとめ」として これまでの議論を取りまとめた。 第 1.はじめに 1. 大麻を取り巻く現状 (1)大麻草及び大麻の性質 ○大麻草の種類及び性質(一属一種) 大麻草は、アサ科の一年生草本、中央アジア原産で古くから繊維や種子を得るための原料植物として栽培されてきている。 大麻草(Cannabis sativa L.)は、アサ科に属する一属一種の一年生草本で、subsp. sativaとsubsp. indicaの2つの亜種に類別さ れる。現行の大麻取締法(昭和23年法律第124号)では、大麻を「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。た だし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」と定義し(大麻取締法第 1 条)、 大麻の取扱い(栽培、輸入・輸出、譲渡・譲受、所持等)を禁じる制限を課した上で、免許者(大麻栽培者及び大麻研究者)につ いてのみ当該制限を一部解除している(大麻取締法第3条及び第4条)。 大麻草には、特有の化合物としてカンナビノイドと呼ばれる一群の化合物が含まれ、約120 種類報告されている。主なカン ナビノイド成分として、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)、カンナビジオール(CBD)が存在している。生の植物中 では、主にテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビジオール酸(CBDA)として存在し、保存や加熱処理でΔ9-THC と CBD に変換される。カンナビノイドが多く含まれる部位は、花穂、葉、苞葉であり、Δ 9-THC の含量は、品種により異なる が、一般的に、花穂で 10 〜 12%、葉で 1 〜 2%、茎で 0.1 〜 0.3% 程度とされている。 ○大麻の有害性とΔ 9-THC 大麻の有害作用を引き起こす主な成分はΔ 9-THC である。このΔ 9-THC が脳内のカンナビノイド受容体に結合し、神経回路 を阻害することにより作用が発現する。軽度の身体依存も知られている。これまでの研究においても、大麻の使用による健康 への悪影響が指摘されている。大麻の薬物依存性に関しては、覚醒剤やコカインと比較して軽度であるが、大麻の乱用を繰り 返すことにより、大麻の精神依存に陥ることが知られている。また、大麻を長期間乱用することにより、記憶や認知に障害を 及ぼし、さらに精神障害を発症するなどの健康被害を生じる危険性がある。大麻の使用による主な作用は以下のとおりである。 大麻の急性使用 1. 高揚感、脱抑制 2. 吐き気、抑うつ、興奮、錯乱、眠気、パニック発作 3. 音刺激、触覚に対する知覚の変容 4. 時間感覚の歪み、短期記憶の障害 5. 自動車の運転への影響、運動失調と判断力の障害 大麻の慢性使用 1. 薬物依存、退薬症候の発現 2. 統合失調症、うつ病の発症リスクの増加(特に、若年からの使用はハイリスク) 3. 認知機能、記憶等の障害 4. 他の薬物使用のリスクを高める (2)我が国における薬物対策及び大麻事犯の現状 ○薬物5法 薬物関連の法律には、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬、麻薬向精神薬原料、けし、あへん、大麻、覚醒剤、覚醒剤原料、 指定薬物といった規制対象物質に応じて、それぞれの取締りを目的とした法律が存在する。 ・麻薬及び向精神薬取締法(麻向法) (麻薬 ・ 向精神薬乱用による保健衛生上の危害を防止するため必要な取締り、麻薬中毒者 15 大麻規制のあり方に関する大麻規制検討小委員会 議論のとりまとめ(案)