(4)大麻の使用場所・形状大麻の使用場所は、国内のみ
55 ・3%、海外のみ
19 ・1%、国内および海外
14 ・9%、使用場所不明
10 ・6%でした。これは、大麻使用が合法化(あるいは非犯罪化)されている海外(例えばカナダ)に渡航し使用するよりも、国内で流通している大麻を何らかの方法で入手し、使用している場合が多いことを示す結果と言えます。一方、使用した大麻の形状は、従来から流通していた乾燥大麻や大麻樹脂のみならず、ワックス・リキッドタイプの使用者や、THCを含有する食品の使用者も報告されました。これは、国内でも新たな形状の大麻製品が流通している可能性を示唆する結果と言えます。ワックスやリキッドタイプの大麻製品には高濃度に抽出されたTHCが含有されている場合が多く、使用に伴う健康影響が危惧されています6,7。こうした製品は電子タバコ(
vaper )で使用され、電子タバコの使用に伴う二次的な急性肺障害の発生が指摘されています。最近では、電子タバコまたはベイプ製品関連肺障害(
E-cigarette- or vaping product-
associated lung injury )という言葉も使われるようになってます8。大麻に対する予防教育や啓発では、こうした新たな形状の大麻製品に関する情報やその健康影響についても触れていくことも重要です。医薬品使用の結果と考察(1)解熱鎮痛薬の使用者の増加2019年から2021年にかけて、解熱鎮痛薬の使用率が顕著に増加しました。例えば、過去1年使用率は
63 ・1%から
70 ・1%に、過去
30 日使用率は
31 ・7%から
42 ・3%に増加しています(図3)。その一方で、習慣的使用(週3日以上の使用と定義)には大きな変化がみられませんでした。これは恐らく、新型コロナウイルスのワクチン接種に伴う発熱などの副反応への対処として、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を短期間のみ使用したことを反映した結果と解約できます。(2)
精神安定剤および睡眠薬の習慣的使用の増加精神安定剤および睡眠薬の使用状況で気になるのは、2019年から2021年にかけての習慣的使用率の増加です。例えば、精神安定剤について、女性では3・1%(2019年)から4・6%(2021年)と顕著な増加がみられる一方で、男性では横ばいで推移していました(図4)。つまり、コロナ禍において、精神安定剤や睡眠薬による定期的な治療を必要とするようなメンタルヘルス面での不調には性差があり、特に女性において顕著に影響を受けている可能性を示唆しています。この結果は、
COVID-19 とメンタルヘルスとの関連性について調べた先行研究とも一致しています。例えば、オーストラリアの成人におけるコロナ禍の精神的苦痛を調べたインターネット調査によれば、
Depression (抑うつ)および
Anxiety (不安)のスコアは男女差がなかったものの、
Stress (ストレス)について女性のスコアが男性を有意に上回っていたと報告されています9。また、
COVID-19 のパンデミックがメンタルヘルスに与えるインパクトを調べた研究によれば、不安・抑うつ・PTSDに関連する危険因子として、女性であること、
40 歳以下であること、
62.9%
64.2%
63.1%
70.1%
26.9%
32.6% 31.7%
42.3%
2.3%
2.7%
2.8% 2.9%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
2015 2017 2019 2021
過去1年使用率 過去30日使用率 習慣的使用率
図 3 一般住民(15-64歳)における解熱鎮痛薬の使用状況
(2015-2021 年)
2.7%
3.0%
3.7%
3.5%
3.2%
2.4%
3.1%
4.6%
3.0%
2.7%
3.4%
4.1%
2.0%
2.5%
3.0%
3.5%
4.0%
4.5%
5.0%
2015 2017 2019 2021
男性 女性 全体
図 4 一般住民(15-64歳)における精神安定剤の習慣的使用の
状況(2015-2021年)
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