-E:不正作物の撲滅および代替開発に係る国際協力に関する行動計画-

総会は、不正薬物との闘いが、責任共有の原則に基づき、国際薬物統制条約の規定に従って続けられなければならず、国連憲章および国際法の目的および原則に完全に適合し、特に各国の主権となる領土不可侵性、各国の内政不干渉の原則、ならびに、あらゆる人権およびおよび基本的自由を完全に順守する総合的かつバランスの取れたアプローチを必要とする事を再確認し、効果的な作物統制戦略が代替開発、法執行および根絶を含め、多種多様なアプローチを含みうることを認識し、包括的で恒久的な不正薬物問題の解決という枠組みにおいて、対象となるコミュニティーおよび集団に特有の社会文化的特徴を認識しながら、薬物対策を実行している国における持続的な国民経済の成長および持続可能な開発努力の文脈に置いて、特定的に策定された農村開発措置を通じ、麻薬および向精神薬の成分を含む植物の不正栽培を防止・排除するプロセスとして代替開発を定義し、麻薬および向精神薬の不正生産の問題がしばしば開発問題と結びついていること、ならびに、こうした連関は責任共有の文脈において、各国、国連薬物統制計画をはじめとする国連システムの権限ある機関、地域機関および国際金融機関の間の密接な協力を必要としていることを認識し、薬物乱用対策の効果を最大限にあげるためには、不正な需給双方の削減を含むイニシアチブに適切な資源を配分することにより、バランスの取れたアプローチを維持する必要があることを意識し、麻薬および向精神薬の不正生産を削減する共通の努力の実効性を確保し、持続可能な人間関係に貢献するための戦略、プログラム及び国際協力に関し、以下の目標を定めるべき事を主張する。

I:大量の不正栽培に対処するバランスのとれたアプローチの必要性

課題:
1.不正薬物作物の禁止を促進する国際条約が採択されているにもかかわらず、ケシ、コカおよび大麻の不正栽培は依然として由々しき問題となっている。歴史が示すところによれば、不正薬物の栽培および生産を削減、排除するための決まった対応策はない。バランスの取れたアプローチは、戦略の効率化と大きな成果をもたらす可能性が高い。

行動:
2.各国はケシ、コカおよび大麻ならびにその他の薬物作物の不正栽培を強く非難するとともに、コミュニティーの指導者にもこれを非難することを促すべきである。

3.各国は、1961年の「麻薬に関する単一条約」、1972年の「単一条約を修正する議定書」および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」における不正薬物作物栽培に関する特定的コミットメントの実施および執行を確保すべきである。特にこの中には、麻薬および向精神薬の成分を含む植物の不正栽培を防止するために適切な措置を講ずること、ならびに、代替開発への支援を含め、根絶努力の効果を上げるために協力することを締約国に義務づけた1988年条約第12条2項および3項が含まれる。

4.薬物作物の不正栽培が行われている国は、既存の薬物統制マスタープランを考慮した具体的で測定可能な目標を含め、不正作物の削減および廃絶に関する国内戦略を開発すべきである。国内薬物作物削減・廃絶戦略には、代替開発、法執行および根絶に関するプログラム等、包括的な措置を含めるべきである。

5.各国は、代替開発に関する国内計画を開発・実施するための適切な措置を講じ、適切な機関とともに、相応の法的、経済的および社会的枠組みを創設すべきである。

6.代替開発のプログラムおよびプロジェクトは、国内薬物統制政策、ならびに、影響を受ける農村共同体における国内持続可能開発政策および戦略との一貫性を保つべきである。

7.農民のアイダに低所得生産構造がある場合、代替開発は強制的根絶に比し、持続可能性が高いばかりでなく、社旗的にも経済的にも適切である。

II:代替開発のための国際協力強化

課題:
8.代替開発は、不正薬物作物の栽培に対し、合法的で持続可能な経済オプションを創出・促進する上で、重要な要素であるばかりでなく、国連の地球規模戦略という包括的枠組みの中で採択された不正薬物生産削減のための政策およびプログラムびおいても、鍵を握る要素の一つとなっている。代替開発の策定および実施の一義的責任は、不正薬物栽培が行われている国にある。しかし、不正薬物作物の生産国は、責任共有の原則に基づき、薬物作物の廃絶を図る国内努力支援のための資金提供を必要とし続けるものと見られる。現在の所、国内レベルでも国際レベルでも、代替開発に利用できる資金は不十分である。

行動:
9.代替開発プログラムの成功は、地域社会、薬物統制措置の効果的執行、および、薬物乱用の悪影響に関する地域住民の啓発を含めた総合的農村開発の支援を要する。影響を受ける各国政府および国際社会双方の長期にわたる政治的・財政的コミットメントにかかっている。

10.国際社会および国連薬物統制計画をはじめとする関連国連機関は、不正薬物作物の削減および廃絶を目的として、代替開発のための十分な資金および技術援助を提供することにより、各国の不正薬物生産対策を援助すべきである。かかる援助は、被援助国の国内統制戦略の文脈において提供すべきである。また、不正栽培国の国内的コミットメント、および、1988年条約第14条に含まれる規定を実施する強力な政治的意志にも援助を関連付けるべきである。

11.国連システムの機関および関連する金融機関は、その権限の範囲内で、不正作物栽培の影響をうける地域及び住民のための農村開発支援に協力すべきである。

12.国際金融機関と地域開発銀行に対しては、代替開発プログラムへの資金援助提供を奨励すべきである。

13.国連薬物統制計画は、国際金融機関、非政府機関、関連する国連機関および民間セクターに対する媒介的役割を継続し、自国の代替開発プログラムおよびプロジェクトの資金調達および支援を目的に、かかる機関にアプローチする関係国政府を援助すべきである。

14.各国に対し、国境地帯における根絶および代替開発プロジェクトを策定・実施するために、協力に関する二国間メカニズムに合意することを呼びかける。

15.不正目的で栽培される作物の合法的取引目的の生産による代替から生じる価格およびマーケティング関連の問題を克服するため、国際社会は、代替開発製品の国内および国際市場に対するアクセス改善を図るべきである。

16.代替開発プログラムは十分な薬物統制および開発の潜在的可能性をもつ地域を対象に策定すべきである。

III:代替開発へのアプローチの改善および革新

課題:
17.代替開発は、バランスの取れた包括的薬物統制戦略の重要な構成要素であるとともに、この戦略実施のための環境整備を目的としている。その意図は、生計を立てる唯一の現実的手段として不正栽培に手を染めたコミュニティーおよび住民グループを対象として、合法的で持続可能な社会経済的オプションを促進し、総合的な貧困の根絶に貢献することにある。しかし、既存のプロセスを強化し、新しい革新的な代替開発プログラムを実施するためには、累積的な努力と計画・実施方法をさらに改善する必要がある。

行動:
18.代替開発プログラムとこれを目的とした国際協力は、以下の性質を持つ物とすべきである。 (a)所定のプロジェクト対象地域で一般的な特定の法的、社会的、経済的、生態的および文化的条件に適応する。
(b)不正栽培の存在によって影響を受けるコミュニティーおよび住民グループの生活条件向上に資する、インフラの整備を含めた総合的農村開発を通じ、社会的、経済的機会の創出に貢献する。
(c)コミュニティーの参加を奨励する民主的価値観の促進に貢献し、不正作物栽培を拒絶する市民文化を開発する社会的責任を醸成する。
(d)対象となるコミュニティーに薬物乱用が見られる場合、適切な需要削減措置を含める。
(e)策定及び実施を含め、開発プロセスに男女が公平に参加できる条件を整えることにより、ジェンダーの側面を組み入れる。
(f)「アジェンダ21」の目標を勘案し、環境の持続可能性に関する判断基準を順守する。代替開発のプログラムおよびプロジェクトは、生態的に脆弱な地域への不正栽培の拡大あるいは移動を回避する有効な手段として用いることができる。

19.代替開発の持続可能性を確保するために、代替開発の判別、準備、実施、関しおよび評価には、対話路説得に基づき、コミュニティー全体及び関連非政府機関を含める参加型アプローチを採用すべきである。地方のコミュニティーと行政当局は、共通の合意による目標を開発するとともに、コミュニティーを起訴とする協定により、廃絶に至るまで不正作物を削減することを誓約すべきである。

20.地域および地方レベルにおける制度の建設は、代替開発によって育成される活動への参加レベルの向上に貢献する要因として捉えるべきである。

21.各国は、地域的文脈を勘案して代替開発プログラムを策定すべきである。各国は、二国間、地域および多国間の手段をつうじて協力し、ある地域あるいは国から別の場所への不正栽培の移動を回避すべきである。

IV:監視、評価および情報共有の拡充

課題:
22.各国はしばしば、ケシ、コカおよび大麻の不正栽培廃絶のために勇敢な努力を行ってきた。にもかかわらず、政策および活動レベルでの情報と協力が不十分なために、かかる努力の潜在的効果は完全に発揮されていない。また、近年では、不正薬物作物の栽培および生産がその他の国にも現れ、世界中のあらゆる地域に広がっている。最近の動向の中には、新たな方法および技術をもちいた囲い地での栽培・生産も見られる。

行動:
23.生産地域の政府は、もっとも効率的かつ費用効果および利用可能性の高いデータ収集方法を用いて、効率的で正確な監視・検証メカニズムを策定すべきである。

24.各国政府は、代替開発プログラムの質的・量的効果を自分で監視できるようなフォローアップおよび評価システムを実行すべきである。不正作物削減の持続可能性は、代替開発にとって最も重要は評価基準である。

25.不正栽培廃絶のための協力を拡大するため、各国政府は、国連薬物統制計画との間で、さらに、他国政府との間で相互に、不正薬物作物の放火に関する情報を共有すべきである。その他の開発問題との関連も含め、薬物作物生産の原因と影響に関する情報も評価の対象とすべきである。

26.近年になって不正薬物作物の栽培および生産が増えている国々は、問題の程度を評価する資料を作成し、この情報も同様に交換すべきである。このような国々は、不正薬物作物の栽培および生産問題に取り組む国内計画を策定・実施する際、これらの要因を考慮すべきである。

V:不正作物取締りに関する法執行の必要性

課題:
27.代替開発プロジェクトが成功を収めたとしても、単にその他の機会が存在するという理由だけでは、自発的に不正生産を止めない可能性が高い栽培者および加工者もいる。このような人々には、薬物作物の不正栽培を続けることには危険性が伴うことを理解させなければならない。

行動:
28.不正薬物作物の栽培問題を抱える国々は、必要に応じて法執行措置により、代替開発プログラムを補完するようにしなければならない。 (a)代替開発が実施されている地域においても、密売連鎖のその他の箇所においても、不正薬物製造所の操業、前駆物質の転用、密売、マネー・ローンダリングおよび関連する組織犯罪等、その他の不正行為に対処するためには、代替開発プログラムを補完する要素として法執行措置が必要となる。
(b)包括的な法執行プログラムは、不正に栽培される薬物作物の収益性に影響を与えることにより、これに代わる合法的な所得源の競争力と魅力を向上させることもできる。

29.不正薬物作物の栽培や薬物生産に犯罪組織が絡んでいる場合には、1961年条約および1988年条約で求められる不正薬物作物の根絶・廃棄および逮捕等の措置が特に適切である。

30.実際の代替所得源が既に存在する地域においては、薬物作物の不正栽培の存続に対抗する法執行措置が必要である。

31.代替開発プログラムによって実際の代替所得源がまだ確保されていない地域においては、強制的な根絶措置の執行が代替開発プログラムの成功を妨げる可能性がある。

32.根絶努力においては、利用できる研究成果を活用し、環境面で安全な方法の利用を確保すべきである。

VI:フォローアップ

33.我々は国連薬物統制計画事務総長に対し、第20回特別総会の全般的成果を勘案した上で適宜、麻薬委員会に本行動計画のフォローアップに関する報告を行うよう要請する。

※補足
16.「前駆物質」という言葉は、1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」表IあるいはIIに記載されているいずれかの物質をサスものとして用いられているが、文脈により異なる表現が必要となる場合はこの限りではない。このような物質は、その一義的化学特性に応じて、前駆物質あるいは不可欠な化学品と呼ばれることが多い。1988年条約では「麻薬あるいは向精神薬の不正製造に頻繁に用いられる物質」という表現が用いられた。しかし現在では、かかる物質を単に「前駆物質」と呼ぶことが一般的となっている。この用語は技術的にみて正しいものとは言えないが、ここでは便宜上これを用いている。

17.United Nations, Treaty Series,vol.976,No.14152
18.Resolution 45/116,annex
19.Resolution 45/117,annex
20.Resolution 45/118,annex
21.Official Records of the Economic and Social Council,1996,Supplem,ent No.7(E/1996/27)chap.XIV
22.Resolution S-17/2,annex.
23.United Nations,Treaty Series,vol.520,No.7515.
24.Ibid.,vol976,No.14152.
25.Official Records of the United Nations Conference for the Adoption of a Convention against Ilicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances, Vienna,25 November-20 December 1998,vol.I(United Nations publication,Sales No.E.94.XI.5).
26.Report of the United Nations Conference on Environment and Development,Rio de Janeiro,3-14 June 1992,vol.I,Resolutions Adopted by the Coference(United Nations publication,Sales No,E,93.I.8 and corrigendum),resolution 1,annex II.