-B:前駆物質の取締り-

総会には、近年において、前駆物質の転用が、不正薬物製造分野で最も深刻な問題の一つとなっているという事実を認識し、1961年の「麻薬に関する単一条約」および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」が薬物および前駆物質の取締りに関する国際的基盤を定めていることに留意し、化学品の合法的取引から不正薬物製造への転用防止が、薬物乱用および密売に対処する包括的戦略に不可欠の要素として重要であることを再確認し、この問題に立ち向かうためには、かかる犯罪行為の防止および処罰を可能にする幻覚で近代的な法律の制定と実験的影響、ならびにこの問題への対処に必要な人的・物的資源を有する効率的で十分に訓練された捜査機関および司法機関の設立が要求されることを認識し、その多くが簡単に代替できる化学品を用いて、様々な方法で不正に製造できる合成薬物によって定期される特別な問題に留意し、また、国際麻薬統制委員会の「前駆物質および不可欠な化学品の転用防止に関する国内当局用指針」、および、1988年条約第12条の実施に関する国際麻薬統制委員会年次報告の付録「各国政府による1988年第12条の実施に関する国際麻薬統制委員会の勧告概要」をはじめとする、国際薬物統制条約実施に関する実用的指針の開発において見られた進展にも留意し、多くの国の権限ある国内当局間の協力によって得られた前駆物質出荷取締りの進展、ならびに、この協力を促進し、不正取引への転用防止のために個別取引の合法性を検証する政府への援助を行う上で国際麻薬統制委員会が行った重要な作業を意識し、また、多くの国々が、取引の合法性を判定できるような詳細な捜査を実施するために十分な資源を欠いているという事実も意識し、前駆物質取締りの経験によれば、前駆物質転用を防止する上で、全関係国の権限ある国内当局および関連国際機関の間の多角的情報交換を、飛鳥に応じて二国間および地域的情報共有取決めによって補完することが不可欠であることを考慮し、薬物密売人が、1988年条約の表IおよびIIに記載された物質およびその他代替品として利用される物質を含め、薬物の不正製造に必要な前駆物質を入手し続けていることを深く憂慮し、前駆物質転用防止措置が効果を現すのは、共通の原則と目標に導かれた全世界的な協調行動と国際協力を通じてのみであることを考慮し、代替的化学品を含む麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、密売、流通、および、合法経路から不正取引への転用を防止する措置、ならびに、前駆物質取締りに関する国際協力を強化するための追加措置を、以下のように採択することを決定する。

I:麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、密売および流通を防止する措置

a:立法および国内取締りシステム

問題:
1.各国が転用防止のために取るべき行動、および、転用の試みを暴き、出荷を防止する上でのこれらの行動の成功は、各国が、前駆物質の移動を実効的に監視するのに十分な立法基盤あるいは取締りシステムを確立した場合にのみ可能となる。さらに、現行立法を効果的に実施するためのメカニズムおよび手続きも確立しなければならない。 2.実効的な取締りシステムを確立するため、各国は、権限ある国内当局とその特定的役割を明らかにし、この情報を他国と共有する必要がある。各国はまた、取締り措置の実際的適用の詳細も共有すべきである。 3.これら必要な措置を講じていない国々も多い。

行動:
4.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。 (a)特に、1988年条約の表Iおよび表II に記載する物質の製造およ流通に係わる企業および個人の取締り・許可制度、ならびに、疑いのある積荷の発見を容易にすることを目的とした、かかる物質の国際貿易監視システムの設立を含め、まだ着手されていない分野において、「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」第12条の規定および提案、ならびに、関連する麻薬委員会および経済社会理事会の決議の厳格な遵守に必要とされる国内法規を採択・実施するととともに、かかる取締り実施の責任を負う権限ある国内当局を指定する。
(b)国際麻薬統制委員会の1988年条約第12条実施に関する年次報告に含まれる同委員会の関連勧告を十分に考慮した上で、現行の前駆物質取締り規定を定期的に審査し、何らかの弱点が明らかになった場合には、これを強化する適切な措置を講ずる。
(c )国内立法規定に従い、前駆物質の合法的取引から薬物の不正製造への転用に関連する個人あるいは企業の違法行為を、1988年条約第3条にいう刑事犯罪として処罰するために、刑法、民法あるいは行政法上の措置を講ずる。
(d )立法措置採択のための手続、ならびに、適当な場合には取引追跡調査の利用を含め、前駆物質の不正取引および転用を防止・処罰する措置の適用に関する経験を交換する。
(e)時宜に応じて、国際麻薬統制委員会に対し、輸出入の認可のために満たすべき要件の詳細を含め、前駆物質の輸出入および中継を取り締まるために採択された国内規制に関する報告を提出する。
(f)押収された化学品の処分が環境に悪影響をもたらさないようにするため、必要な措置を講ずる。

b:情報交換

問題:
5.輸入国と輸出国の間の迅速で時宜に適った情報交換は、効果的な前駆物質の取締りの鍵を握るものであり、これによって各国は、個別取引の合法性を検証し、前駆物質転用防止のために疑わしい積み荷を判別できるようになる。時宜に適ったフィードバックを含め、その他の権限のある国内機関および国際麻薬統制委員会との間で、このような情報交換を確保する体系的メカニズムを極秘ベースでも確立していない国が多い。

6.同様に、密売人も、必要な化学品の入手の道が閉ざされたとき、その他の国の供給源に素早く乗り換えている。経験によれば、転用未遂および疑わしい取引あるいは足止めされた積み荷に関する情報を、他の場所で同じ試みが行われないよう、他国および国際麻薬統制委員会と即座に共有することの重要性が確認されている。

行動:
7.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じて出来る限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。 (a)以下の行動を含め、前駆物質取引監視のためのメカニズムおよび手続きを改善する。

(I)特に、輸出国から輸入国の権限ある当局に対する、1988年条約の表Iにある物質と、同第12条10項の要件に加えて無水酢酸および過マンガン酸カリウムが絡むあらゆる取引に関する輸出前通告、ならびに、輸入国の要請に応じた事務総長の通告を含め、前駆物質の輸出が行われる前に、これに関して輸出国、輸入国および中継国の間、ならびに、国際麻薬統制委員会との間で定期的な情報交換を行う。麻薬および向精神薬、特にアンフェタミン系興奮剤の不正生産に効果的に対処する上での輸出前通告の重要性と有用性を認識し、表IIに記載されるその他の物質についても、同様の努力を行うべきである、これらの措置は、これも前駆化学品の転用防止を確保する上で必要な、すべての国における厳しい国内取締りを補完すべきである。
(II)該当する化学品に対する合法的な国内需要に関する情報交換、輸出前通告を受けた国による輸出国に対する時宜に適ったフィードバック、および、輸入国から要請があった場合に、合法的な最終用途を検証するために十分な時間(15日間まで)を認める輸出国による規定を含め、事前に取引の合法性を検証するメカニズムの権限ある国内当局による実施を促進する。
(III)輸出国、輸入国および中継国の間、および、国際麻薬統制委員会との間で、前駆物質がからむ疑いのある取引、および、適切な場合には行われた押収および取引拒否に関する情報を交換する。

(b)1988年条約第12条11項の規定に従い、前駆物質の輸出入あるいは中継および意図された用途に関して各国が提供した報告に何らかの業界・企業秘密あるいは取引プロセスが含まれている場合、これを非公開とする。必要に応じ、個人データの正当な保護を確保するため、適切な法的枠組みを設定すべきである。
(c)輸出入であれ積換えであれ、ある取引の合法性が検証できない場合に下された前駆物質出荷許可の拒否決定について、可及的速やかに国際麻薬統制委員会および必要と考えられうるその他の関係国に通報を行うとともに、他国が同様の行動を検討できるよう、拒否理由に関するすべての関連情報を提供する。輸出入国あるいは中継国は、出荷許可の発効を検討する場合、当該取引のあらゆる要素、特に、該当する積み荷について許可を拒否した国によって提供された情報がある場合、かかる情報を十分に評価した上で、決定をくだすべきである。

c.データ収集

問題:
8.合法的取引の通常のパターン、ならびに、前駆物質に係わる合法的用途および要件に関する情報は、個別取引の合法性を検証する上で必要である。このような情報がなければ、1988年条約第12条が義務づける前駆物質の移動監視は難しくなる。前駆物質の合法的移動に関するデータを収集できていない国も多い。この能力の欠如は、十分な取締りのための枠組みおよびシステムができあがっておらず、前駆物質取締りに関する権限分担が明確化されていないことを示しているとも考えられる。

行動:
9.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じて出来る限り各国の民間セクターとも協力して、以下を行うべきである。 (a)秘密保持とデータ保護に関する規定に従いながら、前駆物質の合法的製造・輸出入および前駆物質取引に関連するその他何らかの活動に関するデータ取得、ならびに、前駆物質の疑いのある発注あるいは盗難事件を報告し、常に権限ある国内当局と協力することを義務づけられた、前駆物質関連活動を行う公企業あるいは私企業の登録簿作成を含めた前駆物質の移動監視を目的として、柔軟で効果的なメカニズムをそれらがまだ存在しない分野において、設計・確立する。
(b)例えば、指針あるいは行動綱領の制定を通じ、化学品の貿易・生産業界団体、および、前駆物質に関連する何らかの活動を行う個人あるいは企業との協力を確立あるいは強化し、かかる物質の取締りを狙いとする努力を強める。
(c)情報交換を改善するため、化学品の製造あるいはマーケティングを行う者について「己の顧客を知れ」という原則を確立する。

II:前駆物質取締りに関する国際協力の普遍化を目指して

問題:
10.前駆物質の転用防止に成果が見られているのは、対策を講ずる輸出入国・地域及び中継国・地域の政府が世界中で増えているためであるが、その数は依然として限られている。

11.これらの国々は、前駆物質取締りに関する包括的立法を制定していない場合でも、自らの領土で前駆物質の移動を監視する特定の措置を講じている。しかし、取締りが不十分な国および地域を密売人が転用地点として利用しているという事実があるにもかかわらず、十分な前駆物質取締りシステムを開発していない国も多い。前駆物質の密売に関して類似の状況に直面するすべての国々が、転用の試みを暴くために同様の実際的な措置を講じなかったり、取締り実施に関する経験を共有しなかったりする場合、取締りはその目的を果たさない。密売人による不正薬物製造に必要な前駆物質の入手可能性を制限するためには、すべての国々がより統一的な行動をとる必要がある。

行動: 12.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じてできる限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。
(a)疑いのある取引、ならびに、国際麻薬統制条約とこれに関連する決議、指針及び勧告に基づき、二国間あるいは地域協定を補完するような形で国内の前駆物質取締り法規を実施する過程で足止めされた積み荷に関し、広範で多角的な情報交換を促進するための統一的手続きを制度化する。
(b)前駆物質の国際取引の効果的な関しに不可欠な情報の交換を奨励する多国間協定を促進し、特に個別取引に関する情報共有のための実際的システム公安に重点を置きながら、類似の二国間あるいは地域協定を補完する。
(c)1988年条約第12条12項(c)に従い、前駆物質の不正取引および転用を防止する措置を講ずることを目的として、かかる不正行為について犯罪組織が用いる方法や手段に関して、より体系的な情報を広める。
(d)前駆物質の取締りを強化し、その不正目的への転用を回避するため、最も資源が少ない国々を最優先に、要請におうじた各国向けの技術援助プログラムを促進する。
(e)警察、税関、ならびに、その他前駆物質転用の行政捜査、差し押さえ、発見及び取締りに関連する経験の交換を促進する。
(f)必要に応じ、専門的な技能とノウハウを向上させるため、前駆物質の不正取引・転用対策に関する専門家会合を開催する。

III:代替化学品

問題:
13.1988年条約表IおよびIIに記載する不正薬物製造に必要な前駆物質の中には、同条約の規定実施の結果、入手が特に困難となったものがある。密売人は、取締りの厳しい前駆物質の代替品として利用しうる化学品の入手に成功している。これに加えて密売人は、1988年条約表Iおよび表IIには現在のところ記載のない物質を必要とする。あらたな加工法あるいは製造法を判別・利用している。密売人はまた、いわゆる取締り薬物類似品も製造しているが、その多くも、現在表IおよびIIに記載されていない物質を原材料としている。

行動: 14.各国は、権限ある国際機関および地域機関、ならびに、必要に応じて出来る限り各国の民間セクターとも協力し、以下を行うべきである。
(a)1996年7月24日の経済社会理事会決議1996/29第I節によって要請されるとこのに従い、現在は1988年条約表IおよびIIに記載されていないが、その薬物不正取引への利用について実質的な情報が存在する物質に関し、国際麻薬党背委員会との協力の下に限定的国際特別監視リストを作成し、同条約第12条12項に従って、合法的経路から不正取引に転用された取締り対象外物質について定期的に委員会に報告することにより、上記リストの維持に貢献するとともに、薬物の不正製造に用いられかねない物質の時宜にに適った判別を目的に、取締り対象外物質の潜在的用途にかんする研究を促進する。
(b)国内あるいは地域レベルで妥当な物質に関する特定の監視措置を含め、化学業界との協力の下に、自発的、行政的あるいは立法的監視措置を適用し、特別監視リストに含まれる物質の合法的経路から不正取引への転用を防止する。加えて各国は、1988年条約第3条に言う刑事犯罪として、麻薬あるいは向精神薬の不正製造に用いられることを知りながら取締り対象外の化学物質の転用を行った者を処罰し、関連する刑事罰、民事罰および行政罰を導入することを検討する。