-A:アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の不正製造、
取引および乱用防止に関する行動計画-


総会は、以下の「アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の不正製造、取引および乱用防止に関する行動計画」を採択する。

I.アンフェタミン系興奮剤の問題に対する認識の向上

問題:
1.アンフェタミン系興奮剤(ATS)の問題は、多くの国では比較的新しい問題ではあるが、急速に拡大しており、このまま消え去るとは考えられない。その規模と地理的範囲も急速に広がっている。しかし、この問題に関する世界的な認識は限られており、対応もまちまちで一貫性に欠いている。

行動:
2.国際社会は、より高い優先度を以て、アンフェタミン系興奮剤の問題へのあらゆる側面からの対策を進めるべきである。国連システムの権限ある主体は、この問題に適切に考慮すべきである。アンフェタミン系興奮剤の問題の優先度を高め、麻薬委員会の定期的な議題とすべきである。

3.国際機関および地域機関は、幅広い国際条約の枠組、ならびに、経済社会理事会、麻薬委員会および国際麻薬統制委員が採択したアンフェタミン系興奮剤問題の諸側面に取り組む決議あるいは決定の実施を求め続けるべきである。

4.国連薬物統制計画、国際麻薬統制委員会、席亜保健機関等の国際機関は、アンフェタミン系興奮剤問題の技術的・科学的側面に関する活動を強化し、各国および一般向けの定期刊行物でその成果を普及すべきである。

5.各国は、この問題に正当な優先度と注目を与え、上記3.で触れた地球的枠組みを実施すべきである。

6.各国による努力に加え、アンフェタミン系興奮剤問題に対する認識を高める上で、民間セクターおよび非政府機関の動員も模索すべきである。

7.各国は、本行動計画遂行のために取った行動に関する情報を広め、これを麻薬委員会に報告すべきであり、報告を受けた麻薬委員会は、国内、地域および国際レベルにおける行動計画実施状況の審査および評価を行うべきである。

II:不正なアンフェタミン系興奮剤の需要削減

問題:
8.多くの国において、アンフェタミン系興奮剤の乱用はますます若年層に集中する傾向があるが、若者達の間では、こうした物質が安全で無害であるという誤った考えが広がっている。このようなアンフェタミン系興奮剤の乱用は、消費文化の主流におどりでる危険をはらんでいる。

行動:
9.国連薬物統制計画、世界保健機関などの国際機関は定期的に(a)アンフェタミン系興奮剤とその副産物の健康に対する影響に関する目下の情報を照合し、(b)アンフェタミン系興奮剤に対する需要の原動力となっている社会的、経済的および文化的諸力を研究し、(c)アンフェタミン系興奮剤乱用の防止および治療、ならびに、合法的なアンフェタミン系興奮剤の処方に関する適切な慣行を判別、文書化および普及し、(d)これらの分野で非政府機関と活動の調整を行うべきである。

10.各国は(a)アンフェタミン系興奮剤の乱用パターンの変化を継続的に監視し、(b)アンフェタミン系興奮剤乱用の社会面、経済面、健康面および文化面を調査し、(c)能力があれば、アンフェタミン系興奮剤乱用の健康に対する長期的影響に関する研究を優先課題とし、(d)国際機関が照合した情報を含め、これらの活動の成果を、対象を絞った予防・治療努力、および、適当な場合には啓発キャンペーンに活用して広め、(e)アンフェタミン系興奮剤乱用の悪影響に関する情報をその教育キャンペーンに含めるべきである。

III:アンフェタミン系興奮剤に関する正確な情報の提供

問題:
11.これまで裏社会に隠れていたアンフェタミン系興奮剤に関する情報は、近代技術によって幅広い人々に入手可能となっている。アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造法、アンフェタミン系興奮剤の乱用方法、無害な薬物としてのアンフェタミン系興奮剤のイメージ、および、現行の取締をかいくぐる方法は、いずれも幅広く知れ渡っている。この悪影響に対処するため、インターネットなどの情報技術を教育・訓練目的に活用すべきである。

行動:
12.国内、地域および国際レベルにおいて適宜、従来のメディアおよび通信・ソフトウェア業界の代表と協議を行い、その自生を促すと共に、現行法に基づき、不正な薬物関連情報の排除に向けた枠組みを開発すべきである。枠組みの開発は、ユーザーがインターネット上で不正な薬物関連資料を発見した場合にこれを報告できる「報告ホットライン」等、業界が管理する開放的苦情メカニズムを起点とすることが出来るよう、執行行為の責任は、引き続き適切な執行機関が負うべきである。各国は、ソフトウェアの格付け・選別方法の開発および利用を奨励することで、違法ではないが好ましくない情報を含んでいる可能性のある資料からユーザーが身を守ることを可能にすべきである。

13.各国は、不正薬物と薬物関連情報に関する自国の法的枠組みが適宜、オフラインの場合と同様インターネットにも適用されることを確保すべきである。

14.国連薬物統制計画、国連教育科学文化機関、世界保健機関、国際刑事警察機構、関税協力理事会(通称世界関税機関)等の国際機関と適切な地域・国内機関は、全世界的な情報交換システム(すなわち、インターネットを通じた薬物乱用に関する国内、地域および国際資料センターへの電子接続)に参加し、アンフェタミン系興奮剤問題の諸側面に関する正確で時宜に適った情報を広めるとともに、特に開発途上国への援助を重視して、沿革学習へのインターネットの活用を行うべきである。

15.各国は、(a)近代的情報技術を用いて、アンフェタミン系興奮剤乱用の健康面、社会面および経済面での悪影響に関する情報を広め、(b)とりわけ国際情報交換システムを通じ、アンフェタミン系興奮剤に関する対策方法の開発、用語の統一および協調的データ収集を奨励すべきである。

16.各国はまた、1971年の「向精神薬に関する条約」第10条(取締り対象物質の一般向け宣伝禁止)および1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」第3条(薬物関連不正行為の公然の教唆禁止)にある規定を完全実施するよう、適切な行動をとるべきである。

IV:アンフェタミン系興奮剤の供給抑制

問題:
17.アンフェタミン系興奮剤に関し、主たる供給統制戦略は、密売に焦点を絞り、不正製造を止めさせ、試験機器および化学原料(すなわち前駆物質)の転用を防止することである。地域間で取引されるのはアンフェタミン系興奮剤の最終生産物ではなく、前駆物質であることから、この最後の要素は特に重要である。しかし、前駆物質には幅広い合法的な産業用途があり、合法的な国際貿易にも組み込まれている。実効的な監視は、産業の密接な協力があってはじめて可能である。このような協力はまた、合法的供給源からのアンフェタミン系興奮剤の転用防止においても、死活的な役割を果たす。各国政府が国際麻薬統制委員会に提出した情報によれば、アンフェタミン系興奮剤の合法的国際貿易から不正経路への転用がみられており、一部の国ではアンフェタミン系興奮剤の合法的消費量が多くなっている。

行動:
18.1988年条約第12条、関連する経済社会理事会決議、および、国際麻薬統制理事会の勧告に規定する前駆物質取締りに関する既存の枠組みに基づき、酷使亜、地域および国内レベルの権限のある当局は、アンフェタミン系興奮剤の前駆物質を対象として、以下の行動をとるべきである。
(a )アンフェタミン系興奮剤の前駆物質の取引を律する措置や行動規範を確立すべく、業界との密接な協力を促進する。
(b)輸出前勧告の使用拡大および国内・国際レベルでの情報交換手続きの改善を含め、1988年条約の対象リストに揚げられたアンフェタミン系興奮剤前駆物質の転用取締り措置の実施を拡大する。
(c)疑わしい取引の判別を助けるための当局と関連業界との自発的協力を含め、アンフェタミン系興奮剤の不正製造に頻繁に用いられることが明らかになっている取締り対象外物質の監視を改善する。
(d)一般的早期警戒システムの一環として、上記(b)に述べた物質の国際的特別監視リストを確立する。
(e)1988年条約第3条に言うところの刑事犯罪として、アンフェタミン系興奮剤の不正製造にもちいられることを知りながら取締り対象外の科学物質の転用を行った者を処罰することを検討する。
(f)不正取引の発見および防止を目的とした取締り対象外物質に関する調査の場合を含め、あらゆる関係機関間で情報交換を行う。

19.アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造に対象を絞るため、国際、地域および国内当局はまた(a)ヤミ製造法を監視し、(b)薬物の特定分析とプロファイリングを開発し、(c)1988年条約第13条に従い、試験機器の販売を出来る限り監視し、(d)アンフェタミン系興奮剤の技術的複雑性を取り扱うすべての執行・取締り担当職員を訓練し、(e)化学構造が類似する物質の区別、および、アンフェタミン系興奮剤に含まれる個別物質発見のための手続きを開発し、これを執行当局の使用に供する可能性を模索すべきである。

20.各国は、アンフェタミン系興奮剤の不正製造および密売対策の執行努力を強化すべきである。

21.1971年条約および関連する経済社会理事会決議に基づき、権限ある当局は、業界との協力のもと(a)合法的な製造、国際貿易および小売り取引(薬局)からの不正経路への転用、ならびに(b)かかる物質の無責任なマーケティングおよび処方を発見・防止するために、アンフェタミン系興奮剤、不正製造、取引および流通の動向を厳しく監視すべきである。権限有る当局はまた、1971年条約および関連する経社理決議に従い、あらゆる情報を交換することにより、国際麻薬統制委員会ともに密接に強力すべきである。

V:アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質に関する取締りシステム強化

問題:
22.国際薬物統制システムは、アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造に適用しようとする場合、いくつかの弱点を露呈するが、その中でも重大なものとしては、取締り対象の向精神薬を決定する手続きが複雑であること、前駆物質取締り体制が比較的新しいものであること、および、国際薬物統制条約による取締り範囲の変更に異なった手続きが用いられていることがあげあられる。地域ごとに異なりうる緊急事態について効果的な対処あるいは予防を行うためには、迅速かつ柔軟で新たな状況への適応力を持ち、かつ、新たに発生するアンフェタミン系興奮剤問題の複雑化に技術的にも理念的にも対応できる取締りシステムが必要である。

行動:
23.規制による幅広い取締り範囲に関し、国際機関及び地域機関、ならびに、各国は適宜、以下を行うべきである。
(a)不正市場で発見された新しいアンフェタミン興奮剤を迅速に、判別・評価する。この評価を利用して、各国は、不正製造および密売に対する法的行動をとれるよう、かかる物質を取締対象とすべきか否かを決定することもできる。
(b)特に取締り対象物質指定の柔軟化に関し、取締りの技術的基盤を改善する。このためには、様々な国で用いられている以下のモデルのいずれかが適用されることになろう。
  (I)対象物質指定の緊急あるいは簡素化プロセス
  (II)構造的に類似したグループ(類似品)に基づく対象物質指定
  (III)科学構造の類似性、および、既知あるいは予測される薬学的効果に基づく、刑事訴追を目的とした取締り
(c)関連する経社理決議を実施するとともに、1971年条約により、向精神薬の取締りを麻薬と同レベルに強化することを目指した国際麻薬統制委員会の勧告を検討する。
(d)1971年条約第22条および1988年条約第3条に従い、アンフェタミン系興奮剤の不正製造および密売に対する適切な制裁および罰則措置を導入し、アンフェタミン系興奮剤に関連する犯罪に対する法律執行努力を強化し、国内の法律および政策に沿って、アンフェタミン系興奮剤乱用に対する適切な罰則や代替的措置を検討する。
(e)発見したヤミ製造所の規模、製造法、用いられる前駆物質、純度、価格、アンフェタミン系興奮剤路その前駆物質の供給源、疫学的情報等の問題に関するデータ収集と情報交換を改善する。
(f)とりわけ、アンフェタミン系興奮剤取締りに関する国内法の制定、修正に関する国家相互の情報交換、アンフェタミン系興奮剤のヤミ製造および密売における新たな動向を監視するための地域的取り決め、ならびに、迅速な通信経路の確立を通じ、地域的協力を強化する。
(g)アンフェタミン系興奮剤が提起する複雑な技術的問題に対処するノウハウが限られている国々の要請に応じ、アンフェタミン系興奮剤の製造、密売および乱用に対する効果的措置の実施に必要な情報と援助を提供する。
(h)アンフェタミン系興奮剤とその前駆物質の取締りシステムを強化し、「己の顧客を知れ」という原則を貫徹させるために、アンフェタミン系興奮剤の絡む取引に関する各国間の情報交換を改善する。