[ 薬物乱用防止に対する国際協力体制 ]

 世界の多くの国々において薬物乱用は深刻な問題となっており、環境問題、エネルギー問題などとともに、世界的な問題であることは明白である。

 薬物乱用問題は年々多様化するとともに国際性を強めており、この問題の解決にあたっては、国際的な協力が不可欠の要件である。

(1)薬物乱用に関する国際条約
ア.「1961年の麻薬に関する単一条約」(単一条約)
 Single Convention on Narcotic Drugs,1961

 それまで各国が個別に締結していた多数の国際条約、協定等を一本にまとめ、国際的麻薬管理を整理統合し、より実効あるものに統一したもので、1961年3月、ニューヨークにおいて採択され、1964年12月に発効の運びとなった。この条約は、1995年11月現在、わが国を含む153カ国の締約国を擁し、麻薬に関する国際規範となっている。

イ.「向精神薬に関する条約」(向精神薬条約)
 Covention on Phycotropic Substances,1971

 麻薬に関する単一条約が採択されてから10年後の1971年2月「向精神薬条約」が採択された。この条約は単一条約が規制の対象としている物質(麻薬、あへん、大麻)以外の幻覚剤、鎮痛剤、覚せい剤、睡眠薬、精神安定剤等の乱用を防止するため、これまで規制のなかったこれらの物質についても国際規模での統制を図る必要があるとの認識のもとに締結されたものである。

 本条約は1976年5月その効力発生に必要な締約国数(40カ国)に達し、同年8月16日に発効した。わが国ではこの条約が規整の対象とする物質のうちLSD、覚せい剤等の一部の物質については国内法により既に規制を実施していたが、平成2年第118回国会において同条約批准のため麻薬取締法を麻薬及び向精神薬取締法に改正し、所要の国内制度を整備し、同年8月31日に条約の批准書を寄託した。1995年11月現在においてわが国を含む140カ国の締約国を擁している。

ウ.「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」
 United Nations Convention against Illict Traffic in Narcotic Drugs and Phycotropic Substances,1988

 麻薬等の乱用薬物については前記の「単一条約」及び「向精神薬条約」により国際統制が行われているが、近年になり、麻薬等の不正取引が増加し、一層深刻な状況となっている。このため麻薬等の取引に対して規制を強化すべきとの国際世論が高まり、1984年の第39回国連総会において国連麻薬委員会に対して本条約案作成の準備作業の開始を決定し、「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(新条約)の検討が開始された。

 新条約は前記2つの条約に規定されていない事項等について取り締まりの効果を期することを目的として麻薬の不正取引、麻薬等の不正な製造などに用いる原材料、器具の製造、分配行為及び不正取引に由来する財産の隠匿行為(マネー・ロンダリング)等の処罰化、不正取引等に由来する収益の没収、裁判権、犯罪人の引渡し、国際捜査協力の強化、コントロール・デリバリー、麻薬等の不正な製造等に用いられる化学薬品の監視または規制措置、不正に栽培される麻薬原料植物の撲滅等を内容としており、1988年12月19日ウィーンにて採択された。

 わが国では、本条約に対応して、「麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律」及び「国際的な協力の下に規制薬物に係わる不正行為等を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法などの特例等に関する法律」が平成3年第121回国会において成立し、所要の国内制度を整備し、平成4年6月12日に本条約の批准書を寄託した。1995年11月現在、119カ国の締約国を擁している。

■関係国際機関の活動